こんちわ!おいさんだよ。
キミは維新志士の故郷・萩を訪ねたことはあるかい?
オレはねーよ。萩ってどこだ?
「いしんしし」ってなぁに?
ポー
むむむ……
萩は多くの維新の英傑を排出し、吉田松陰が開いた松下村塾がある場所じゃ。
?
まぁ、とにかく今回はそんな萩の地を案内するのじゃ!
「一人旅・後半戦」5日目
温泉津温泉を訪れたドラねこは、
そのあまりの強烈な温泉を満喫した後、電車に乗って山口県・萩を訪れたのでした。
今回は前回の島根県・温泉津温泉から電車で4、5時間揺られてたどり着いた山口県・萩を案内するよ。
前回まではこちら
温泉津温泉に行って寅さんになった気分を味わったよ、という話(*´ω`*)
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浴槽はまるで鍾乳洞!日帰りでOKな温泉津温泉が凄すぎw
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山口観光1 幕末の聖地で出会ったすごい男
YH(ユースホステル)から城下町に出た。ここは萩の武家屋敷である。
萩には多くの武家屋敷が並んでいて、江戸時代には毛利氏が治める長州藩の本拠地として幕末には吉田松陰・高杉晋作・桂小五郎などの志士たちを多く排出した土地として知られている。
実はわし、ここに来るまで全然そんなことは知らなかった。
ここに来た理由は一つ、山陰方面ではここしかYHがなかったからだw
それまでわしは連日、漫画喫茶に泊まってきた。この旅の初日以外はほとんどそうであった。
そんな生活を繰り返してくるといかんせん漫喫にも飽きてきた。
漫喫に泊まると背中と肩がすごく痛いし、いい加減そろそろどこちゃんとしたとこに泊まりたい。
そう思って手持ちのiPhoneで調べたら、もうわしの旅の道程ではこの萩しかなかったのだ。
そんな萩のYHに着くとよくしゃべるおっさんがわしを迎えてくれた。
このおっさん、愛想よくしゃべるけどこっちの話は全く聞いていない。
一人でしゃべるだけしゃべって一人で盛り上がっている一種の変人である。
それをのべつ幕無し聞かされるコチラは段々腹が立ってくる。
余計なことはいいから早くチェックインの手続きしてくれよ。
こっちは疲れてんだよ!(# ゚Д゚)っと、心の中で悪態をつきながら説明を聞いていた。
YHに泊まるとよくこういった変人に遭遇する。
その割合はほとんどユースの主人に多い。何故かよくわからないんだけどそうなのだ。
多分、社会で頑張って働いて来たんだけど世間に馴染めなくて(個性が強くて)お金を貯めてユース始めました、的な人が多いんだろう。
↑立派な門があるお医者さん。今でもやっているらしい。
こういう人に出会うと、
「大丈夫かな?この宿。また変なおっさんのいるところにきちゃったな…(-_-;)」
と、こちらは心配になる。
しかし、こちらは泊めてもらう側。
イヤなら泊まらなきゃいいじゃん、という声が聞こえてきそうだが、萩にはわしみたいな貧乏バックパッカーが他に泊まるところはない。漫画喫茶もない。
なので、貧乏旅行の身の上としては黙って泊まるしかない。
↑大きな門。萩の歴史資料館である。
こういうおっさんは大体気配りができない。
ましてやこっちは現代っ子。なるべくならドミトリーでもお客さんが少ないならそれぞれ別々に部屋を取って欲しいのに、十中八九ほかの旅行者と相部屋にされるのだ。
それを聞かされると、
正直「またか…」という思いでこのアホウ(失礼)を内心毒づきながら案内された部屋に向かう。
しかし、まさかその案内された場所で、奇跡は起きたのだ。
↑萩の資料館の中。入場料を取られるので入らなかった(-_-;)
この萩のYHはいくつかの部屋がそれぞれの棟にわかれていて、中庭を渡って一番左のプレハブのような部屋に辿り着いた。
扉を開けると部屋は十畳ほどの広さに4つの簡易ベッド、一つ大きなテーブルが置いてある。
↑縄文から歩いて行くと広い道が見える。
部屋には誰もいない。
その内の一つにはもう荷物が、ベッドの横に青いカッパがかけてある。
木で出来たロッカーの足元には、少し大きめなバッグと地図らしきものが置いてあった。
それがこの部屋に先客がいたことを表す証拠だった。それがT氏の荷物だった。
Tさんとの出会い
あ~あ、やっぱりホントに相方がいるのか、と少しがっかりしながら荷物を解いていると、宿のおやじが「もうとっとと風呂に入っちゃってください。後の人が困りますから」などとうるさく早めに風呂に入るように勧めてくる。
うるさいなぁ……どうせ泊まってる人なんか少ないんでしょ?(-_-;)
いやいやながらも風呂場に向かう。
↑何故かいきなり現れた井戸。いきなり道の真ん中にぽつんとあった。
服を脱ぎながら、
あ~、相部屋の人が嫌な人なら泊まるのヤだなぁ……なんで別々にしてくれないんだよ!
あのおしゃべりオヤジめ!!(# ゚Д゚)
と、宿のおっさんに対しての怒りがメラメラと湧き上がる。
そんなことを思いながら湯船に浸かり、すぐに風呂を出た。
↑こちらも大きな門。さっきの門とは違って堂々と構えている
部屋に上がって着替えると、戸口が開く音がした。
そして、あの人に出会ったのだ。
振り返って見ると、その人は手にコンビニの袋を抱えた姿で立っていた。
Tさん「あ、ど、どうも(´・ω・`)」
わし「あ、ちわー。あの、今晩はお世話になります(;´∀`)」
お互いぎこちなく挨拶を交わした。それがTさんとの初めての出会いだった。
初めての人と意気投合。
はじめは緊張した。
なにせ見ず知らずの人と、相部屋になったのだ。
相手がとどういう人なのかもわからないから話もしづらいw
なんとなくお互い気まずい雰囲気を感じつつ、自己紹介をした。
T氏は今まで務めていた会社を辞め、自転車一つで日本一周に挑戦しているナイスガイだ。
まるで高校一年の時、まだ仲良くなっていないクラスメートたちと泊まった林間学校を思い出す。
Tさん「旅行者ですか?(^^ゞ」
お互いどちらともなく名乗り始めると、自分たちが一人旅をしている者同士であることがわかり、ほっとする。
ただ違うのはTさんは東京から自転車に乗って、わしは静岡から徒歩と電車で日本中を周ろうとしていることだ。
そこから後は早かった。 お互いツライ旅路をゆく者同士。
旅の話に華が咲くのには、さして時間はかからなかった。
Tさんは結構旅慣れた…というか冒険慣れした人で、これまで色んな山を登った登山家でもあった。
以前から山登りに興味があるわしはそんなTさんの話が熱心に聞いた。
そしてそれに吊られるようにTさんは自身の冒険を沢山語ってくれた。
Tさんは自身が富士山に登って恐ろしい目にあった体験談を語れば、わしは分杭峠でひどい目にあったことを語った。
二人とも面白可笑しく話合い、その日の話は大いに盛り上がった。
ああ…そういえばこんなのも久しぶりだ。
わしはこうした旅の思い出を語り合える友を求めていたのだ(*´∀`*)
縁は異なもの味なもの?
それにしても元々不動産会社に務めて営業をしていただけあって、Tさんは話が上手い。
初対面なのに会話ベタなわしと話が途切れることなくどんどんおしゃべりは進んでいく。お互い語り明かすことはいっぱいあった。
わしの旅は思えば孤独な旅だった。
それまでのわしは見るものといえばもっぱら神社仏閣や建築物ばかりで、その感動を誰とも分かち合わずに一人でここまで進んできた。
わし自身、人と話すことを欲していたのだろう。
これまで孤独に重いバックパックを背負い、旅してきた辛さを、誰かと分かち合うことをしたかったのだ。
わしはここまで神社仏閣をお参りする際、どの神社でもいつもあるお願いをしていた。
それは、
どうかこの旅が良い人と出会える「御縁」がありますように
ということ。
どこの神社にいっても、わしはただこのことだけを願っていた。
「御縁」というものは、なにも男女の仲だけのことじゃない。
これから生きていく上で、巡りあうであろう素晴らしい人達に「出会う」ことも大切な「御縁」なのだ。
「縁は異なもの味なもの」
Tさんとの出会いはまさにそれだった。
その日のTさんとの会話はどこまでも楽しく、お互いそれなりに過酷な旅を乗り越えてきた者同士、いつまでしゃべっていても飽きなかった。
なんだか長年親しんだ友と話しているような気持ちになれた。
色んなことをしているTさん
年も近いこともあってか、なんとなくお互い心の中で認め合いつつ、自分の今までの人生のことなどもポツポツ話し始める。
バイトをクビになり、世の中に不信感を持ったわしは見聞を広める旅をしてみることを決意した話。
黙ってわしの話を聞くTさん。そしておもむろに今度は自分のことを語りだした。
Tさんは、身長は180cmはあり、顔もイケメンでなかなか感じのよい好青年。
まさに見た目、THE・ナイスガイと言っていい好青年。
そんなTさんは今まで勤めていた不動産会社で年収1000万円も貰いながら働いていたが、自分の仕事に疑問を持ち、上司や同僚の反対を押し切って、会社を辞めることにしたのだという。
わし「い、いっせんまん……(;´Д`)ゴクリ」
そんな大金を手に入れられる会社を、いともあっさり辞められるなんて、この就職難にニートが聞いたら怒ってくるぞ!w
大学を卒業してからその会社に7年程勤めあげ、お金だけは沢山手に入るその仕事がTさんにはどうもしっくりとこなかったらしい。
何度も辞めようかと思ったが、そのたびに上司に引き止められ、同僚には相当バカにされたらしい。
それでもTさんは曰く上司に
「いや、お金だけが人生じゃありません!(; ・`ω・´)」
と、言い放って会社を辞めたという。
わしはびっくりして、口をあんぐり開けて声も出せなかった。
そ、そんな、まさか。
そんなトレンディードラマみたいなカッコイイ人がホントにいるのか!
わしはこの思い切った行動をしたTさんを尊敬の目で見つめていた。
そんなTさんの心意気に心底男気を感じるわしなのだった。
そしてTさんは今度は年収1000万の仕事よりも、給料は安いけれどやりがいのある小学校の先生になるつもりだという。
エライ!
こういう人にどんどん先生になってもらいたい!
「人生は金だけじゃない!」
手垢のついた陳腐なセリフのように聞こえるかもしれない。
東日本大震災を迎える前の日本人なら多くの人が一笑に付したことだろう。
しかし震災後の日本は原発事故などを通してそれまでの物質至上主義に疑問を覚えた人たちが多くいたことだろう。Tさんもきっとその内の一人なのである。
こんなことはなかなか言えない。
世間の大人はよく建前で「幸せは金では変えない」と言うがそれはあくまでも建前であって、いざお金のない生活をしろと言ってもなかなかできるものではない。
だがTさんそれを本気で実践している。
こうしたことを声高に叫べる立派な大人がいまこの国にどれくらいいるだろう?
それにしてもTさんは言う。
「…なんて偉そうなこと言ってるけど、今は無職だからね。
それに所得税は去年の分で来るから税金が毎月高くて大変だよw」
Tさんは毎月去年の年収分の税金30万円(!Σ(゚д゚lll)ガーン)
も払っているらしい。
「無職で30万はキツイよ。まぁ、今まで稼がせて貰っていたからしょうがないけどね」とTさんは笑っていた。
そんなTさんもこの旅が終わったらまもなく結婚するという。
Tさんは結婚を約束した人と、「今しかできないことをやりたいから」という理由で、披露宴を恋人にガマンしてもらって「今しかできない」一人旅を自転車に跨がり全国を周っている。
恋人は彼の帰りを今でも優しく待っていてくれているという。
そしてTさんは東日本大震災の際には被災地にも、何度かボランティアに出かけたらしい。
被災地に出かけて行って汗を流し、自分の考えが間違っていないことに決意を新たにしたという。
すごいな、この人は(゜o゜;
こんな人が実際にいるのか。
話を聴けば聞くほど思わずそう思う。
この記事を読んで読者も、「そんな奴がいるかよ」と思われるかもしれない。
でも、現実にいるのだ。
このTさんとの出会いは、嘘でも、作り話でも、釣りでもない。本当の話である。
今の世の中には、ホントにこんな熱い魂をもったナイスガイがいる。
話をしていてなんだかわしは自分が恥ずかしくなった。
自分の今までの悩みがなんとも小さなものに思えたからだ。
神の味噌汁
旅はおいしいものを食べること、素晴らしい景色を見ること、そういった諸々が旅だと思われがちだが本当はそうじゃない。
旅とは、良い景色や食べ物に触れることではなく、素晴らしい人たちと出会うことが一番の宝なのではないか?
その宝とはまさしく「縁」というものだろう。
そうした「御縁」は神の味噌汁、
……じゃなかった神のみぞ知るものだろう。
そうした神の味噌汁を飲めるかどうか、素晴らしい人達に旅先で出会えるかどうかが、旅を素敵なものにできる大切なことなのだ。
こうしてTさんとわしは、お互いに連絡先を交換し、次の日別の道にそれぞれ旅立っていった。
Tさんは東に、わしは西に。
そういえば以前立ち寄った出雲大社が、確か縁結びの神様だった。
もしかしたらこのTさんとの出会いも、この出雲の神様が与えてくださった「御縁」かもしれない。
ありがとうTさん!
この場を借りて、お礼を申し上げる。
素晴らしい人との出会いに感謝な一夜だった。