ちわ、おいさんだよ。
今年は文学界に久しぶりに大きなニュースが舞い込んできたね。
カズオ・イシグロのノーベル文学賞・受賞だな。
わしも6年くらい前からカズオ・イシグロの作品は読んでいたけど、まさかノーベル賞を取るとは思わなかったよw
確かに思わぬダークホースって感じで、世間的には「カズオ・イシグロ……誰?」っていう雰囲気だったよなw
うむ、そこで今回はそんなカズオ・イシグロの作品の中で知られざる…というか知る人ぞ知る短編集「夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)」を紹介するのじゃ!
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本を読む本とは?という話(*´ω`*)
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夜想曲集
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いやぁ、びっくりした。
先日、日本生まれのイギリスで活躍している作家カズオ・イシグロが選ばれた。
去年あたり綾瀬はるか主演で「わたしを離さないで」がドラマ化していたから、カズオ・イシグロも日本でそれなりの認知度を得たんだろうな……と思ったらいきなりノーベル賞ですよw
これでまたカズオ・イシグロ氏に注目されるのは間違いないだろう。
たぶんメディアなんかではカズオ・イシグロの代表作として「日の名残り」とか、去年ドラマ化した「わたしを離さないで」などを取り上げているんだろうけど、このドラねこ読書ノートではそんなベタな作品を取り上げない。
わしはもうマイナーな作品を取り上げてみよう!
というわけで、カズオ・イシグロってスゴそうだけど何を読んだらいいかわからないというキミに「夜想曲集」なんか読んでみるのはどうだい?
この「夜想曲集」は、音楽をモチーフに5つの物語が進んでいく。
それにしてもなぜわしがこの作品をわざわざ選んだか?
それはカズオ・イシグロの小説を読むにはこの短編集が一番入りやすいと思ったから。
そう、この本は短編集である。
例えばデビュー作の「日の名残り」は読むには、いささか知性というか教養がいる。
というのもこの本は第二次世界大戦後の数年間が舞台で、失脚した主人に仕えていた執事スティーブンスが車で旅をする、という物語なのだが、作中では大戦当時のイギリスとドイツの様子や政治状況についてある程度の知識を持っていないと話の内容がイマイチわからず、物語の中に入り込むことができない。
「わたしを離さないで」などは、ちょっと作品全体が淡く、薄ぼんやりしているというか、かなり主人公たちの生まれの秘密が特殊で、中盤くらいまで意図的に隠されているので、あまり本を読み慣れていない方は意味がわからなくて途中で投げ出してしまうかもしれない。
そこで今回、わしは誰でも読める万人受けする作品としてこの「夜想曲集」をおすすめしたい。
何より短編だというのがとっつきやすいし、短いからと言ってカズオ・イシグロ氏の持ち味であるムダのない美しい文体が損なわれているわけではない。
カズオ・イシグロってどんな小説を書く人なの?という人にも受け入れやすい本として、わしは本書をおすすめする。
異端のイシグロ作品?
ただちょっと言っておきたいのは、この本はカズオ・イシグロ氏が書く作品のイメージからは少し離れているかもしれない、という点だ。
というのも、カズオ・イシグロといえば、透明な文章を書く人というか、自身もインタビューなどで非常にレイモンド・チャンドラーの文体に感銘を受けたと公言していて、ハードボイルドとまでは言わないがしっかりとムダを削ぎ落とした文章を書き綴る人である。
それ故に美しい文体に仕上がっているのだが、読む人によっては無味乾燥でなんともとっつきにくい「冷淡で・カッコつてけている」という感想をお持ちになる読者もいるようだ。
その点この「夜想曲集」はそんなカズオ・イシグロのイメージに反して、コミカルというか、けっこうユーモラスな視点で様々な登場人物が色んな音楽に関する物語を紡ぎだしていくので非常に読みやすい。
自信も若い頃ミュージシャンを目指し、音楽で生きていくことを夢見ていた青年だったのだが、挫折して小説家になる決意をしたという特殊な経歴の持ち主だけに、そうした音楽に対する思いも人一倍強いようで、この短編には5つの物語一つ一つにそうした作者の音楽に対する熱い思いが感じ取れるような気がする。
カズオ・イシグロの作品でもっと読んでほしい作品はコレ以外にも色々あるのだが、今回一冊を選ぶとしたらわしはこの「夜想曲集」を選んでみた。
秋の夜長にはピッタリの一冊である。