ちわ、わしだよ。
キミは我が国の最高学府を代表する学者の本を読んだことはあるかい?
なんだ?インテリの本ってことか?ねーよ。
ボクむずかしいご本は読めないよう。
ポポポ〜…
いやいや、今回紹介するのは軽いエッセイなのじゃ。
たまには軽い読み物も読んでいかないとね。
それが「我が国の最高学府」を代表する本なのか?
うむ。
今回紹介する「佐藤君と柴田君 (新潮文庫)」は東大の文学部、特に英米文学の二人の学者が音楽・文学・昔の昭和の風景など様々なことを交互に著述するとりとめもないエッセイじゃ。
そこで今回は「佐藤君と柴田君 (新潮文庫)」をご紹介しよう!
前回まではこちら
ハードボイルドなエッセイを読もう。という話(*´ω`*)
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佐藤君と柴田君
いやぁ、おもしろいねぇw
こんなにおもしろいエッセイがあるんだ。
元々外国文学に興味があって、柴田君(失礼)の訳した本とか「生半可な學者」とかはいくつか読んでいたんだけど、こんな風にもう一人の學者さん(佐藤君)と交互にエッセイを書いている本は始めてだ。
といっても、わしはこっちよりも最初に続編の「佐藤君と柴田君の逆襲!!」の方を先に読んでしまったんだけど、柴田君の方はしっていたけど佐藤君が誰なのかイマイチわからなかったw
一応説明しておくと両方共「東大の先生」で、英米文学を教えているんですね。
佐藤君こと佐藤良明氏はトマス・ピンチョンやグレゴリー・ベイトソンなどを翻訳している學者さんで、柴田元幸氏はご存知、盟友・村上春樹氏とともに数々の翻訳を手がける現代日本を代表するすごい翻訳者である。
ピンチョンつったら名だたる研究者や文学者がこぞって論じ合う20世紀を代表する大小説家だし、柴田先生の方はポール・オースターなどの翻訳で特に有名だ。
そんな「天下の東大」に勤めている二人が、本書で柴田氏が「ボーン・イン・ザ・工業地帯」なんて文章を書いていて、めったに人に頭を下げなくていい結構な身分のはずなのに……まったく學者らしくないw
いや、これは悪口じゃないよ。ホントに良い意味ですよw
普通東大っていったら日本の超頭脳が集まるものすごい場所というイメージがあって、そこに勤める教授といえばそれはもうスゴイ博学な天才たちといった印象なのに…
変わり者の二人・・・でも
それがどうであろう。
この本で紡がれる二人の東大教授の文章は、なんとも権威主義とは無縁なポップな様相を呈していて、読んでいて非常に飽きない。
特に柴田氏に限っていえばどこまでも謙虚というか、卑屈なくらいに謙遜をしていて、逆に佐藤氏は東大の先生らしからぬアバンギャルドさと行動力で、アカデミズムの激烈な競争を勝ち抜いて天下の東大に務める人はこんな人達なのかと半ば呆れつつ、性格が対照的な二人を読んで知っていくと非常に親近感が湧くw
こんなおもしろい學者先生は世間に滅多にいないだろうw
それでいて本書の巻末のあとがきで池澤夏樹氏も指摘しているように、やっぱりこのふたり、東大の文学の先生というだけあって文章はウマいし、音楽や文学、そして時折垣間見せる英米ポップスの知識にも精通していて、そうしたふたりのときにアカデミックな文章を読んでいると、最初「こんな人達がホントに東大の先生なのかな?」とびっくりしてしまった印象は薄れていき、やっぱりちゃんとした先生なんだなという安心感を覚えながら最後まで読み通せてしまうw
つくづく東大って、懐の大きな大学なんですね(;´Д`)
続編を読んでも軽快なグルーヴ
最初の本である「柴田君と佐藤君」の方は、けっこう力の抜けたエッセイが中心であっという間に終わってしまったのと対象的に、続編の「佐藤君と柴田君の逆襲!!」の方では、主にお二人が翻訳している文学をたくさん紹介&解説をしてくれているが、こちらも読んでいて味わい深いというか、なんとなくやはり普通のエッセイとは違った独特のグルーヴ感にいつの間にか飲み込まれ、引き込まれてしまう。
とにかくおもしろい!
佐藤先生の人を食ったような文章がぐんぐんと読者を読み進めていってしまうドライブのある文章だとすると、柴田先生はとても優しく親切に読者に丁寧に敬意を払っていただきながら、知的で示唆に富んだ文章で笑わせてもらえる。それがこの本の絶妙なコンビネーションを生んでいるのだ。
こうした本は文章を書く際に大変勉強になる。
たくさん読めば文章、きっとおもしろい文章を書くのに役に立つだろう(たぶん)
それくらいおもしろい二人の東大教授の掛け合いに、アメリカ文化や懐かしの90年代の様子が垣間見えて、なんだかちょっとうれしくなった。
二冊ともおもしろいので、是非両方ともしっかりと読んでもらいたい。