こんちわ、おいさんだよ。
キミは古き日本の姿を知っているかい?
江戸時代とかそこらへんか?
ボク知ってる!昔は「チョンマゲ」だったんでしょ
ポポポ!
うむうむ。確かにそういうことだが、今回は髪型とかそういうものではなく、幕末から明治期にかけて外国人から観た日本はどのようなものだったかということに焦点を当ててみたいと思うのじゃ。
ほーん、外国人から観た日本ねえ。
有名なのは小泉八雲みたいな感じが思いつくけど……
まさしくそんな感じじゃ。
当時日本を訪れた外国人の思いを色々綴った本として、今回は名著「逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)」 を取り上げてみたいと思うのじゃ。
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逝きし世の面影
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だいぶ分厚い本である。
そして読み解くのにだいぶ時間がかかった。ここまで手こずったのは久しぶりである。
「逝きし世の面影」は明治時代の日本を訪れた外国人が、当時の日本の様子を綴った証言を集めた本である。
これを読むと外国人がどのような目線で日本を見ていたかがよく分かる。
現代のわしらがこうした外国人の証言を読んでいくのは非常に興味深い。
そして驚くことに多くの外国人たちが日本の自然がいかに美しい国かに言及している点が印象深かった。
日本は「妖精の国」
驚くべきことに、当時の外国人は幕末・明治の日本は西洋文明とは全然違う「妖精の国」という表現を頻繁に使って、当時の日本を母国に紹介している。
妖精の国というのがなんとも少し「オリエンタリズム」な感じがしなくもないけど、日本で暮らす人々の礼儀正しさや正直さ、優しさなどをほとんど絶賛という形で褒めそやしている。
例えば、当時の外国人が驚嘆した日本人の礼節の部分に、部屋にカギがかからないのに誰も家のモノを盗まない、とか。少し遠出に出かける際に渡したお金と時計が、宿を出た時とそのままで主人のお盆の上に乗っていたとか、日本の治安の良さや日本人の正直さを当時の外国人はこの国は信じられないなどと述べている。
わしらが歴史の授業で習ってきた江戸時代の話では、当時の封建的な社会は人々の自由を奪って過酷な税の取り立てをしていたとか悪い方にばかり教わってきた。
しかし、この本を読むとそうした時代は全くウソで、当時の人間は本当に暮らしやすい日本を生きていたんだなということがよくわかる。
そうした証言が山というほどこの分厚い本に出てくるのである。
ちょっと「オリエンタリズム」が度をすぎる感じがしないでもないが、そうした疑いを差し引いたとして当時の日本人たちの倫理観は西洋の世界に比べると驚くべき高水準にあったようだ。
江戸時代までの日本人は自然とこうした他社への信頼(トラスト)を作り上げていたのである。
こうした遺産はわしらは死者たちから知らずに受け継いでいるのだ。
これは世界的にみて稀有なことだろう。
そうした礼儀正しい日本人の振る舞いを見て当時の外国人が驚いていたのもうなずける。
明治維新を迎える前の日本は非常に道徳も行き届き、素晴らしい人と人の関わり方が随所にあったのだろう。羨ましい限りである。
今も変わらない日本の良さとは?
最近はTVなどでやたら日本を褒めまくる番組が目につく。
だがそうした番組の多くが東日本大震災以降、地震を失ってしまった日本人が自分の自身のなさを埋め合わせるためにナショナリズムを喚起するために求めているのではないか。
それはある種の自己憐憫的で、そうした番組をみることによって「日本スゲー!」と愛国心を煽り、昨今のどうしようもない日本の現実から目をそむけている気がする。
それに比べれば本書に描かれた昔の外国人の目線を知るほうが、よっぽど日本人の美徳を理解できるように思う。
外国人曰くわしらほど人の目を気にする種族はいないみたいだ。
あまりにも自意識過剰で無理して外国人に良いように見られたがっている今の日本人たちを、幕末の日本人が見たらなんと思うだろう?
なんとも気持ちの悪い付和雷同気味の近代日本人に眉をひそめるかもしれない。